しなやかな腕の祈り
口元しか顔は見えなかった。

だけど、妙な違和感を覚えた。







あたし、あの人を知ってる…???







床に座り込んだまま途方に暮れているあたしの前を、4,5人の男が何やら怒鳴りつけながら走り去っていった。







誰??




あの人、あたし知ってるよな






「多嘉穂!!!」




あたしを呼ぶ啓太の声で我に戻った。

折れたヒールを持って立ち上がる。



「大丈夫か??」

「うん…大丈夫やで」

「あのぶつかってきた人…西竜会の人や。」

「やっぱヤクザさんなんや」



膝を擦りむいているぐらいの怪我だったが、こんなデパートで転けたくらいで擦りむくとは、相当勢いよく転けたんだろう。



「パンプス買ってくる」



相変わらず不機嫌なまま、あたしはその場を後にして靴屋へ入った。

パンプスを探しながら、あたしは天と地がひっくり返る程あたしにとって重要な話を聞いた。

あたしから3メートル離れたくらいの所で、やんちゃそうな男の子たちがさっきのヤクザの事を話していた。
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