しなやかな腕の祈り
「ただいま…」



ボロボロになった。

膝は擦りむいてるし、化粧は崩れるし、髪の毛はボサボサになるし。




啓太に、さっきの血まみれのヤクザがお父さんかもしれないと言ったら、驚いた顔をして帰宅を促された。

リビングに入る気にもならず、自分の部屋へ直行した。

その時のあたしの思考回路は、お母さんに今日の出来事を話すか話さないでおこうか…

それに尽きていた。



「やめとこ…違うかもしれんし」




体力が限界すぎて、あたしは電話を掛けるのも億劫だった。

だけど、違和感は絶えなかった。

違和感の中に、親近感もあったような気すらしてくる。

グレまくっていた時に会っていた??

いや、違う。

名前が引っかかる。

いや…同姓同名なんか探せばいるだろう。

でも、ぶつかった時に覚えた不思議な感覚は???



「もぉぉぉ!!!面倒くさぃ!!!しゃらくせぇ!!!」



一人で部屋の中で叫んでいるあたしは、きっと変な人だろう。

結局、忘れる事にした。

自分で、あたしの手でお父さんを探し出して見せる。

だから、今日の事は忘れるんだ。
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