しなやかな腕の祈り
運良く現場が市内で、ギリギリ3分前に現場に滑り込んだ。


「多嘉穂久しぶりのぅ」



親方が笑って足場の上から手を振っている。



「長い事すんませんでしたぁ!!」



あたしは、現場じゃ男になる。

女が女のまま出来る仕事じゃない。

キツいし辞めたくもなるけど、フラメンコを踊るバイラオーラである以上、あたしは鳶師のまま居たい。

お金の話なんか汚いかもしれないけど、フラメンコの衣装は兎にも角にも高くて、サパトスだって釘を打ち直そうと思えば決死の覚悟で金を出さなきゃいけない。

自分の好きな事を好きなようにしたいなら、自分の体を削って働くべきだ…と、あたしは思っているから。




それに、お母さんにも会いに行きたいから。





仕事場の親方や、同僚が好きなのもある。

久しぶりの出勤に胸が踊る。

安全靴を履いて、安全帯や仕事に使う道具を腰に付け、ヘルメットを被って1日の流れを聞いて足場へ上がる。

今日、あたしは隆弘とペアになって仕事をする事になった。

同い年で、何故かあたしと顔が似ているとか言われる隆弘。

ノリがよくて、話しやすいが女ったらしの、どうしようもない奴。
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