しなやかな腕の祈り
とりあえず、かけ直してみた。



『もぉしもぉ-し!!!
たぁかちゃぁぁん』



呼び出し音が3回鳴って、隆弘の
完璧に出来上がった状態の声が聞こえてきた。



「うん、何」



電話をかけてくるのも珍しければ
酔っ払っているのも珍しい。



『今からさぁ-あ
"大山"来いってぇ!!!!
親方らと皆でベロンベロンで
もぉぉぉ大変だからさぁ
多嘉穂も来い!!!』



呂律の回っていないままで
隆弘が喋っている後ろで
親方たちの叫ぶ声も
しっかり聞こえている。



「そんなに酔ってんの??」

『世界が煌めいて見えるしよぉぉ』



行くしかない…と思った。


疲れてるし早めに帰りたかったけど。


酒なんか飲みたくもないけど。


隆弘の介抱もしたくないし。


でも酔っ払って人格が崩壊している親方を
野放しにしておけば
確実に警察沙汰になるから。



「今から行くから
大人しくしててな」


そう言って電話を切った。

また長い夜になりそうだ。

溜め息をつきながら歩き出すと
後ろから啓太が追い付いてきた。
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