しなやかな腕の祈り
"あたしにだけ"じゃ駄目なんだ。
本当にあたしを好きでいてくれるなら
あたしに繋がる全ての人に
優しく、愛想よくいてほしいって
最近思ってしまう。



「冷めて…きたかな」



運転しながら独り言を言う。


秀一叔父さんも、啓太の事はよく思っていないらしい。

啓太もそれは知っている。

だけどそれを直そうとしないから
啓太に対して余計に腹が立つんだ……






"大山"の中は、地獄絵図と化していた。

親方は何故か脱いで
トランクス一丁だし
隆弘は日本酒の瓶を右手に
ビールのジョッキを左手に
テーブルの上に立って二つ一辺に一気飲み。



「何してんねん
この阿呆んだらが」



幸い他の客も出来上がった状態で
親方や隆弘の派手すぎるパフォーマンスを
かなり喜んでくれていた。


それにしても行き過ぎじゃないか???


あたしは隆弘に歩み寄って
日本酒の瓶を引ったくってやった。



「来た来た!!!
多嘉穂ぉ-、お前も飲め馬鹿野郎」



何で、あたしが隆弘に馬鹿野郎なんて
罵声を浴びせられなけりゃいけない…
しかも笑顔で。
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