しなやかな腕の祈り
次の日から隆弘は仕事に来なくなった。
親方たちにも何の連絡もないまま
最高の仕事仲間は居なくなった。
あたしが電話しても、メールしても
着信拒否されていて
一向に繋がらなくなった。
絵里ちゃんは、あれからすぐに入籍したけど
隆弘が仕事を辞めたことも
連絡が取れなくなったことも
あたしは何も告げなかった。
あたし自身そんなに暇じゃなかった。
「遊女、お初…大屋多嘉穂」
曾根崎心中の役柄が発表されて
あたしは堂々の主役に抜擢された。
練習と仕事に追われる毎日が
あたしから隆弘という友達の存在を
日に日に薄くしていった。
『良かったやんか、主役!!!』
お母さんは酒を飲みながら
主役に抜擢された自分の娘を誉めて
『さすがやね、あたしの娘は出来が違う』
なんて、勝手に憂いていた。
お母さんはひたすら海外公演の毎日で
寝る暇すら与えて貰えない程だったそうだ。
あたしもあたしで毎日の忙しさに
止めていた煙草をまた吸い出していた。
この頃は毎日雪で、冬は厳しさを増してくる。
本当に春なんか来るのか???
親方たちにも何の連絡もないまま
最高の仕事仲間は居なくなった。
あたしが電話しても、メールしても
着信拒否されていて
一向に繋がらなくなった。
絵里ちゃんは、あれからすぐに入籍したけど
隆弘が仕事を辞めたことも
連絡が取れなくなったことも
あたしは何も告げなかった。
あたし自身そんなに暇じゃなかった。
「遊女、お初…大屋多嘉穂」
曾根崎心中の役柄が発表されて
あたしは堂々の主役に抜擢された。
練習と仕事に追われる毎日が
あたしから隆弘という友達の存在を
日に日に薄くしていった。
『良かったやんか、主役!!!』
お母さんは酒を飲みながら
主役に抜擢された自分の娘を誉めて
『さすがやね、あたしの娘は出来が違う』
なんて、勝手に憂いていた。
お母さんはひたすら海外公演の毎日で
寝る暇すら与えて貰えない程だったそうだ。
あたしもあたしで毎日の忙しさに
止めていた煙草をまた吸い出していた。
この頃は毎日雪で、冬は厳しさを増してくる。
本当に春なんか来るのか???