しなやかな腕の祈り
同時に、啓太とも上手くいかなくなりだした。

原因はあたしにあることも、分かってた。

啓太と会っている時間があるなら
スタジオに入って練習していたかった。

啓太と微睡んでいる暇は、今のあたしにはない。

嫌いになったわけじゃない。

好きだけど。

それ以上に、曾根崎心中の舞台が
あたしを駆り立てていたから…

一週間も二週間も連絡を取らない事もあった。

スタジオに一緒にいても、話さない事も多くなった。

望美と話さない日もあるほど、あたしは練習に没頭した。






やがて、年は明けて新年がきた。

つまり、あたしたち劇団.椿木蜜華の団員たちに
ラストスパートがかかる時期がきた。

お母さんも連絡の回数を増やしてくれて
『お初』を演じるコツや、お母さんなりのこだわりを話してくれた。








そんなある日、突然啓太から電話があった。



『初詣行こうや』



久しぶりの啓太からの誘いに
久しぶりにあたしも"うん"と答えた。


啓太の車で、伊勢神宮へ向かう道中
あたしは全て話した。
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