しなやかな腕の祈り
車の混雑に紛れて、その時は来た。


雪がチラつく冬の日に、やってきた。


あたしは、もう思い出せなかった。

啓太と出会った時の事も

初めて話した日の事も

二人して警察にお世話になった時の事も





啓太への気持ちも。







「別れよう啓太…
あたしはもう
しやなあかん事が
ハッキリ見えてきたから」








相変わらず何も言い返さない啓太は







あたしの発したその言葉に











静かに相槌を打った。
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