36.8℃の微熱。
 
もしかしたら、入学式なのに帰りが遅いあたしを心配して、お母さんが携帯に連絡をくれているかもしれない。

でもあたしは出ないから、事件とか事故とかの想像をして、気が気じゃなくなっているかも。


まさかとは思うけど、悪い人に拾われて、知らない間に詐欺に巻き込まれていたり・・・・とか。

このご時世だもん、最悪なことはいくらでも考えられる。


先生を待つ間、あたしはそんなことを考えながら落ちていく太陽を恨めしく眺めていた。

あたしは無事だからいいけど、家族のことを思うと焦りが出る。

もぅ〜、早く来てよ先生!!


「はぁぁ〜・・・・」


もう何度目かも分からないため息をこぼし、頬杖をつく。

先生はまだ来ない。


それから10分ほどして、こちらに近づく足音が廊下に響いてきた。

あたしはガタンッと席を立って、教室のドアが開くのを待つ。


間もなくして───ガラガラッ。


「悪ぃ悪ぃ、遅くなった」


と、たいして悪びれる様子もない先生が教室に入ってきた。

・・・・なぜか手に紙を持って。
 

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