36.8℃の微熱。
 
「か・・・・返してくださいっ!」


あたしは、先生にストラップをつままれブラブラ揺れる携帯につかみかかった。

そりゃあもう、必死で。


「ちょっと待った」


けれど、その台詞とともに寸前のところでヒョイとかわされる。

背の高い先生。チビなあたし。

頭の上まで腕を上げれば、たぶん2メートル近くにはなるはず。

垂直跳びも平均以下なあたしが届くわけない・・・・っていうか助走をつけても絶対ムリ。


「うぅ〜、返せっ!どこで拾ったのか知らないけど、それはあたしの携帯なんです!!」

「嫌」

「なんでっ!?」


そんな会話をする間も、無理だと分かっていながらピョンピョン飛び跳ねるあたしと、面白そうにヒョイヒョイかわし続ける先生。

完全に一方通行だ。

そして、1分も経たないうちに息切れし、あたしたちの位置は正反対になった。


「ハァハァ・・・・。なんか、回りすぎて気持ち悪い」

「あはは〜、体力ないねぇ江田ちゃんって」


黒板に寄りかかるあたし。

先生はとーっても涼しい顔。
 

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