36.8℃の微熱。
 
スチャッ!と敬礼のポーズをとって、図書館に駆け出すあたし。

この半日で王子のメガネ姿にもだいぶ慣れた・・・・ような気がする。

だから大丈夫。ちゃんと話せる。


「ちょっと!お弁当の残りは? 勉強道具もどうすんのよー!?」


教室を飛び出すところで、ユカ様のそんな声が飛ぶ。

あたしはキキーッと足にブレーキをかけて、顔だけくるっと振り向いて笑顔で言った。


「ユカ様が食べて!今日は話するだけだから!ありがとー!!」


そしてそのまま廊下を猛ダッシュで駆け抜け、王子が待つ図書館へと一目散に走った。

頭で考えても分からないなら、あとは行動するしかないでしょ。

それを教えてくれたユカ様に特大の感謝をしながら。









「はぁはぁ・・・・。フーッ!」


図書館に着くとまず、あたしは上がった息を整え精神統一をした。

手のひらに『人』と3回書いて、それをゴクリと飲み込む。

そして、いざ・・・・!


「浅野君っ!」


扉を開けると同時に、王子の名前を精一杯呼んだ。
 

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