36.8℃の微熱。
 
けれど・・・・。


「え、江田さん!? どうしたの、そんなに怖い顔して・・・・」


あたしの顔を見るなり、王子はビクッと肩を震わせた。

しまったぁ・・・・。

顔までは気が回らなかったぁ。


「えっ!? 怖い!?」

「・・・・ごめん、ちょっとね」


・・・・。

あたしってば、そんなに怖い顔をしていたのかしら。

いやいやいやっ、でもここは落ち込んでいる場合じゃない。

沈みかけた気持ちをムンッ!と持ち上げ、王子のそばまで歩く。


その間もあたしの顔は怖いままだったんだろう。

またもやビクッと肩を震わせた王子は、それでも逃げずに待ってくれて、おまけに椅子を引いてあたしが座れるようにしてくれた。

・・・・さすがジェントルマン。

こんな優しい人に言うのは心苦しいけれど、でもあたしの気持ちがすっきりしないから。

だから言わせて。


「あのね浅野君、今日はちょっと話したいことがあるのっ」


意を決して王子の目を見る。

・・・・よしっ、まともに見れた。

いけるっ。
 

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