36.8℃の微熱。
 
ビクッ・・・・。

反射的に体が強ばる。

つかまれた腕から恐る恐る王子の顔へと視線を這わせれば、王子の目とかち合うあたしの目。

気を抜くと、どこまでも吸い込まれてしまいそうな目をしていた。


「江田さんだけ言いたいこと言って逃げるのはズルいよ。なに、そんなに庇って好きなの?」

「好きとかじゃ・・・・ないけど」

「けど、なに?」

「なに? って・・・・。ただあたしは、浅野君にも先生を知ってほしかっただけで・・・・」

「なんで?」

「えっ?」


どうしたのよ王子。

なんだか怖い・・・・。

そんなにあたし、王子が気に障るようなこと言った?


「なんで俺があんな人のことを知らなきゃならないの? それを知って、俺はどうしたらいい?」

「・・・・」


あたしは、王子に先生を知ってもらってどうしたかったんだろう。

言葉も出ない。

つかまれた腕は離してもらえる気配は全くなく、逆にどんどん力が込められていく。

昨日、先生の前から連れ出した手と同じはずなのに・・・・全然違う。
 

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