36.8℃の微熱。
 
「言っておくけど」


そこで言葉を区切った王子は、おもむろに立ち上がった。

特に意識したこともなかったけれど、これだけ間近で見ると王子が“男”だって嫌でも意識する。

あたしにはない喉の膨らみ、顎から首にかけてのライン・・・・。

目の前にあるそれらは、明らかにあたしとは違うものだった。


「俺は先生のことなんて知りたくもないから。江田さんがいくら言っても聞かない。言ったでしょ、奪い返すまでだって」

「・・・・」

「俺は俺のやり方で勝負させてもらうから。それだけ」


そう言うと、王子はつかんでいたあたしの手を離し、図書館を出ていってしまった。





ブー、ブー、ブー・・・・。

少ししてあたしの携帯が震えた。


「はい?」

『もしもし茜ちゃん!?』


それはユカ様からの電話で、よく分からないけど、すごく焦っている声だった。


「あー、ユカ様・・・・」

『あー、じゃないよっ。ちょっとどうしたの!? 浅野君、すごい剣幕で教室に戻ってきたかと思ったらふて寝してるよ!?』
 

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