36.8℃の微熱。
 
「断ったらこの携帯は返ってこないと思ってね」

「・・・・」

「怒るだろうな〜、親御さん」

「・・・・」

「それとも悲しむかな〜。すぐに失くしちゃうなんて、もう携帯持たせてくれないかもしれないね」

「・・・・」


ううっ。

これは効く。


卒業するまでの3年間使い続けることを条件に、すごくいい携帯を奮発してもらったんだ。

それを簡単に失くしちゃったなんてことが起これば、どうなることか・・・・想像もしたくない。


「どうする?」

「・・・・」

「ん?」


紙に手が伸び・・・・かける。

夢にまで見たキラッキラの高校生活は、塾に入れば間違いなく叶わずに終わってしまう。

だってこの人、あたしにだけ居残りさせるし、課題の量だって洒落にならないくらい多い。

学校から出るのと合わせると、友だちと遊ぶ時間もバイトの時間も削らないと終わらないよ・・・・。


親に怒られ3年間携帯なしの生活を取るか、塾によって3年間キラキラしない高校生活を取るか。

・・・・どっちも同じくらい嫌。
 

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