36.8℃の微熱。
 
それからというもの───・・。


「江田さん、これから下の名前で呼んでもいい? 茜って」

「どど、どうぞ」

「ありがとう、茜」


ひぃやっ・・・・!

前にも増してキラキラ輝く王子スマイルが、ひょっこりあたしを名前で呼びはじめてみたり。


「・・・・ん? どうしたの?」

「いや。授業より茜を見ていたほうが楽しいから。気にしないで」

「は、はあ」


授業中、妙に隣から視線を感じるなと思ったら、王子がこっそりあたしを見ていたり。

はたまた、ある時は・・・・。


「あー、雨降ってきたなぁ。そういえば茜、傘持ってきてる?」

「ううん」

「じゃあ入れてあげるよ。塾まで一緒に行こ。帰りも送るから」

「え、でも」

「いいんだ、俺がそうしたいの」


朝は晴れていたのに、午後から急に雨がザーザーと降りだした日。

傘のないあたしにつき合って塾まで送ってみたり、帰りも家まで送ってみたり。

「風邪引くからよして」って言ったのにあたしを雨から守るために左肩をずぶ濡れにさせてみたり。
 

< 153 / 555 >

この作品をシェア

pagetop