36.8℃の微熱。
 
そうして黙ってしまうと、細田さんはあたしから顔を離して、フゥと小さく息を吐いた。

そして、小声でこう言う。


「柊を攻略するにはちょっとしたコツがあってね・・・・知りたい?」

「えっ!? あるんですか!?」

「うん」


もちろんあたしは飛びつく。

先生のことは好き、大好き。

でも、さっきのようなドS発言を照れ隠しと言う細田さんのように“片桐柊”という人間を理解しているかといえば、どうだろう。

だから分かりたい、先生のこと。


「ぜひ教えてくださいっ!!」


あたしはレジカウンターに頭突きをする勢いで頭を下げた。

そりゃコツも知りたいけど、どんなに小さなことでも、胸がチクチク痛むような昔の恋の話でも・・・・あたしの知らない先生をもっと知りたい、教えてほしいの!

だって好きだから。

突き詰めたら、それしかない。


「おいおい、そんなに切実に頼まないでくれよ。ホント大したことじゃないんだって!申し訳ないから頭上げて」


頭を下げ続けるあたしに細田さんはそう言うけど、でも・・・・。
 

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