花が咲く頃にいた君と
ここで働き出して、もうすぐ4年が経つ。

ん?
年齢と年月が合わないって?

そりゃそうだろう。

だってあたし、ここで中3からバイトしてますから。


労働基準法に違反しまくってますが、そこらへんは個人経営と親の伝なので、何とか上手くやってもらっていた。


そして、気付いたら。


「おはよう」

「おはようございます。ドン!」

変なあだ名を、付けられていた。


「木下さん、“ドン”は辞めてって言ったでしょ?」

「無理っすよ。実質この店回してんの、ドンなんですから」

ニコニコ笑顔で答える木下さんは、あたしより4つも年上だ。

確か、大学3回、なのに年下のあたしに敬語を遣い、時には指示を仰いでくる。


「結女ちゃん、お兄さんもう無理だよ」

後ろから、ガバッと羽交い締めにされて、思わず色気もくそもない悲鳴を上げた。


「下宮比さん…」

流石に、目の前の木下さんも引き気味で、頑張って苦笑いを浮かべている。

けど、笑顔がひきつってる。


「ねぇ、ねぇ“お兄ちゃん”って言ってみて!」

下宮比さんが、後ろからあたしを覗き込み、甘えた声を出してくる。



「今すぐ地獄に堕ちたいですか?
このロリコン野郎…」

とびっきりのスマイル、心の声まではっきり表に出してしまった。


下宮比さんは、あたしから然り気無く離れて“開店準備に、いっそがしいなぁ~”とあからさまに、視線を反らした。


あたしの横で木下さんが、乾いた笑い声を上げてる。


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