花が咲く頃にいた君と
立て付けが悪いのか、ドアノブを回せば、あとは勝手に扉は開く。


「…っ!」


あたしは息を飲んだ。


黒い燕尾服のお爺さんが、あたしに頭を下げて立っていたのだ。


「お迎えに上がりました」


お爺さんはそう言って頭を上げた。



「東向日 結女様」


お爺さんの丁寧な言葉遣いに、固まるあたし。



ただただ現実と夢の境目に居るような気分だった。



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