花が咲く頃にいた君と
車は走り出してから一時間もしないうちに、目的の場所に着いたらしい。

スモークガラス越しに観る景色は、あたしを驚かせるには十分だった。



十夜は昨日確かにあたしを“売った”と言っていた。


けど売られた先がまさかこんな所だったなんて、思いもしなかった。



実の所、あたしが売られたのは、今回が初めてではない。


そう、あの下宮比さんのバー。


実はあのバイト先が、あたしの初めて売られた先。



あたしは運が良かった。


十夜は昔とんでもない額の借金を作ったことがあった。


その時、取り立てにきたヤクザに“払えないなら、娘を売れ”といわれて あのバカ十夜はあたしを売ったのだ。



しかし、あたしは女の子として終わっていた。



中1からあたしの身長は1ミリも伸びなくなった。



145センチ、体重40キロ
ジャスト。



そんなあたしを、やくざのお兄さん達が哀れむ瞳は、今でも忘れない。





あまりにもお兄さんたちが哀れむから、一暴れしてやった。



手に終えないあたしは、それからすぐに、下宮比さんの店にぶちこまれた。



下宮比さんのお父さんが、組長とかなんとか。


そしてたまたまバイトを欲しがっていた下宮比さんは、あたしを飼った。


色んな偶然が重なって、あたしはまだ貞操を保っていられる。




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