花が咲く頃にいた君と
高級住宅街のどんつき。

一際でかいその家は、左右どちらを見ても、高い鉄柵が続いて終わりが見えない。



車は一時停止したものの、立派な鉄柵の門が開くとまた走り出した。


どんなでかさの敷地だよ。


と半ば呆れていた。
スモークガラス越しに観る景色は、もう見慣れた風景ではなかった。



中世ヨーロッパにでも、迷い込んだ錯覚に陥る。


石畳の道に、広がる原っぱいや、草原?

噴水をぐるッと回ると、遠くに縦に長い円形所の白い建物が見えた。


それに目を奪われていると車は停止した。


助手席に座っていた燕尾服のお爺さんが、車から降りていくのを、仕切り越しに見た。


そしてすぐ、後部座席の扉は開かれた。



ボストンバッグ片手に下りると、眩しい太陽に目を細めた。


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