花が咲く頃にいた君と
綺麗な彫刻が施された木目調の大きな扉は、自動で開きあたしたちをお城へと招き入れた。


中に入ると舞踏会でも開けそうな、大理石のフロア。

彫刻が転々と置かれていて、とてもじゃないけど、それに触れる気にはなれなかった。

高い天井には豪華なシャンデリア。


中央には二階へ伸びるこれまた大理石の階段。


踊り場で、2つに別れた階段は反対の壁に面して通路が繋がっていた。

踊り場の壁にはでっかい額縁に、何やら女の人の絵が飾られていた。


夜一人でこんな所、絶対にうろつけない。


あたしは夜のことを想像して、身震いする身体を抱き締めた。



「若旦那様は今、不在のため、先にお部屋にご案内します」

振り返ったお爺さんと目があったけど、身体を抱き締めたあたしに、何も突っ込んではくれなかった。


『何、ビビってんだよ!』


悪戯な十夜の笑顔が頭に浮かぶ。

それを振り払う様に、首を振ってお爺さんの後に続いた。


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