花が咲く頃にいた君と
流されるまま、ここに着てしまったけれど、あたしは今どんな現状に居るのは全く分からない。


「あの…」


知っておきたいと思うのは当たり前。

なのにその気持ちが今まで後回しにされて来たのは、あまりに急な展開が続いたせいだろう。


「はい、なんでしょう?」


お爺さんは無機質に返事をすると、立ち止まりこちらに振り返ってくれた。

大きな建物のせいか、窓1つ無い廊下は薄暗い。

遠感覚に並ぶ室内灯は柔らかいオレンジ色だったけど、今はその光さえも不気味に感じた。


「…ごめんなさい。何でもないです」


聞きたいことは沢山あった。


あたしを買ったのはどんな人?

どんな理由で買ったの?

何を望んでるの?

あたしは帰して貰える?

十夜はどうしてる?

学校は、バイトは続けられる?


考え出したらきりがない。
けど聞けなかった。
上手く質問の内容がまとまらない。


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