花が咲く頃にいた君と
あたしは自分の荷物を片手に、何個あるのかも分からない部屋の扉を次々に開けていく。


しかしどの部屋も、無駄に家具が置かれていて、まるでモデルハウスみたいだ。


それに何より、一部屋がでかすぎる。


あたしはため息を漏らしながら、もう何十個目かの扉を開いた。


ここもあたしには広すぎるし、豪華過ぎる。


あたしはまたため息を1つついて、扉を閉めた。




そうこうしているうちに、渡り廊下の様な所に出てしまった。


ガラス張りの廊下に、いつの間にかオレンジ色の光が射し込んでいた。



あたしは時間を忘れるまで、自分の部屋を探していたのだ。


気付いたら、お腹の虫が鳴き出した。



10メートルほどの廊下を渡ると、横に延びて廊下のどんつきにこじんまりとした階段が見えた。

それは上にしかのびてなくて、左右迷ったけれど左側の階段を登った。


天井には小さな扉を開けて中を覗くと、色んな物がひしめき合って置かれていた。

そこは物置なのだろう。
あたしはそっと扉を閉めた。


今度は右側の階段を登ってみた。


そこにはさっきみたいな扉はなくて、大きな大きな穴が、あいているだけだった。
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