億万色Love



陽介くんの後ろ姿を見つめながら、私の口は戸惑っていた


なんて言い出せばいいのか分からないよ


緊張のせいか、手に力が入る


「あの…この前のタクシーのことなんだけど…」

「タクシー?」

椅子ごと振り向いた陽介くん


一瞬……私の動きが止まった


眼鏡をかけてる陽介くんを初めて見たから


「私…気付かなくて…それで」

「あぁ、あの時の」

「ごめんなさい!!何も知らないで陽介くんに酷い事いっぱい言っちゃったから謝りに来ました!!!」


思いっきり頭を下げ、これでもかってくらい大音量の声で謝った


「おい…静かにしろよ。家ん中だぞ」

「あ…ごめんなさい。でも、このことは運転手さんに言われなきゃ絶対分からなかったことだし、私ってホントつくづくバカで、周りが見えてないってゆうか…、謝って済む問題じゃないことは分かってるんだけど…どうすればいいか分からなくて…」


「もういいよ。別に気にしてないし」


そう言って、陽介くんは開いていた分厚い本を閉じた


「でも…」

「用件はそれだけ?」

「え…あ、うん」


やっぱり怒ってる


気にしてない、っていうのは私のことを完全に無関係としている証拠


意地悪な最低男にしたのは私だ

すべて私が原因だった


なのに、なんでかな…


陽介くんのあっさりした態度に悲しくなっている自分がいる




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