億万色Love





キッチンに立つ私は階段に繋がる扉を見つめた


流しっぱなしの水の音のせいか


どこかザワつく



"よろしく"


不意に香留の声が脳裏を過ぎり、私は水を止め、濡れた手をタオルで拭いた


でもキッチンからは離れず、タオルを持ったまま立っていた



タンタン……タン


……………ガチャ



扉を開けて入ってきたのは、私の中で"そうであってほしい"と思った人


陽介くんだった


"開かずの間"のことを聞ける絶好のチャンス



動きが止まってる私を一瞬見た陽介くんは何も言わず、冷蔵庫から飲み物を取り出した


不自然に思われた……よね


普段キッチンなんかにいない私が、何もせずタオルを持って突っ立ってるんだもん


洗い物だって途中だし…


そう思って、再び洗い物を再開した


少し距離はあるが、斜め後ろに立ってペットボトルの水を飲んでいる陽介くん


………チャンス、チャンス


チャンスだと思っても、口が開かない


バタン…


冷蔵庫が閉まる音


周りには誰もいない


早く聞かなきゃ…!



「よよよっ陽介くん…!」


どもったぁぁぁぁーーー!!


陽介くんはゆっくり振り返り、私を見る



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