億万色Love
「どう?おいしい?」
「うん、おいしい」
母さんが初めて作ったパエリアを頬張りながら、周りを見渡した
陽介くん……まだ帰ってないみたい
おじさんもまだ帰ってなく、条地家の人間は春人くんだけだった
陽介くん、あのあとすぐに帰らなかったんだ…
「凜」
ご飯も食べ終わって、部屋に帰ろうとした時、連に呼ばれた
「なに?」
「ちょっとコンビニ行かね?買いたい物あるんだ」
「コンビニ?一人で行けばいいじゃん」
「遠いし。車で連れてってよ」
「車っ!?母さんたちは?」
「凜に頼みなさい、って。近くのスーパーにはなかったんだよ。それにコンビニだと歩きで30分は掛かるし。だからお願い!」
お願いって言われてもなぁ…
最近…いや、ずっと運転してないし
免許は持ってるけど、母さんの車で何回かドライブしただけ
通称……ペーパードライバー
「どうしても…?」
「頼む!」
頭を下げてまで、連れてってもらいたいらしい
コンビニで何を買いたいのか知らないけど、弟がここまで言うんだもん…
「……わかったよ。母さんに車借りるって言ってきて。私は免許証探してくる」
「え?あぁ…うん分かった」
連が一瞬戸惑ったのは、きっと私が"免許証探してくる"って言ったからだと思う
だって本当に乗らないんだもん…
引き出しの中にあると思うんだけどな……
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