待っていたの

自分達をよろしくと言う事を繰り返す官吏にも飽き、娘や孫娘を後宮に入れようとする人にも飽きた。


「いいえ…どうぞお気になさらずに」

あの話しをしてから、また硬化した彩の態度を敏感に感じとっている。


もっと仲良くなれるだろうと思ってした話が逆効果だ。


きっと元の世界に帰れないのが不安なのか。


「そうか……」

杯を傾け中身を飲み干す、前で必死に何かを言っている官吏に目もくれず、彩だけを見つめる。


白夜の瞳には映る彩が、彩の瞳には白夜は映らない。

「彩…こちらを向け」

白夜の言葉に従い、こちらを向く彩の瞳には…白夜はうつる。


光をなくしたその瞳にうっているだけだった。


「酒をつげ」

ぞっとした、その瞳さえも俺をうつさなくなってしまったら。


彩は大丈夫なのだろうか?(俺のせいなのか、俺の側にいるのがそれ程嫌なのか?……わからない)


.
< 102 / 243 >

この作品をシェア

pagetop