待っていたの
「よろしくお願いいたします」

白夜がかけてくれた服を胸で掻き合わせ、頭を下げる。

こくっと頷く、ただそれだけだった。
無口な人だ。

「お名前は?」

「公 朱貴」

――こう しゅき

「公様?」

「朱貴と呼んでやって」

黒麗が口を添える、朱貴の顔色を伺うが何も変わらない。


「いいですか?」

とにかく尋ねてみたら、こくりと頷かれた。

「もう、ご用事は?」

「ないよ」

女性をはべらしたまま、黒麗が話すのをみてため息をつく。



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