ラスト プリンス


「…………梨海」

 どうしてっ。

 柄にもなく優しい声音で、目を細めてあたしを呼ぶのよ!

 何よ、作戦っていうわけ?

 そんなの絶対だまされないんだからっ。

「ちょっとっ。こう……あだっ!!」

 頬を包んだその両手は何故か、あたしの両頬をおもいっきりつねった。

「ふっ。ヒデー顔だな」

 ヒデー顔って!
 あんたがつねってるから、頬が横に引っ張られて酷い顔になってると思いますけどぉーっ?!

 押し黙って下から睨むあたしに負けたのか、両頬を解放した耕太。

「俺は化粧してこいとは言ってませんよ?」

「今日会ったときに言われたわ」

「さっきは『落としてこい』と言いましたよね?何で勝手に化粧してるんですかねぇ」

「……はあ。じゃあ、また落としてくればいいですか?」

 何を言っても駄目だろう、と立ち上がったあたしは、耕太に背を向けた。

「どこ行くんですか?」

「化粧落としてく……ぎゃっ!!」

 左腕がありえないくらい後ろに持っていかれ、バランスを崩し、そのまま後ろに倒れるのが分かる。

 ぐわんと視界が反転したため、怖くなって必死に目を瞑った。


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