ラスト プリンス
「女性ホルモンがなんちゃらって僕には分からないんだよっ。あーあ。実家に帰っちゃうし……もう、やだっ!」
「だったら、仕事早く終わらせろ。今日は特別にそれ仕上げたら帰ってもいいから」
「ホントに?!」
「ああ」
すみませーん!
社長と部下の立場が入れ替わってません?
っていうか、カイさんって奥さんにめちゃくちゃ惚れてて子供っぽいんですね。
それにしても、耕太っていい匂い。
なんだろ……。決して甘い香りじゃないんだけど、さっぱりして男っぽい。
「寝るなよー、ちび」
「ね、寝ないわよっ」
確かに、少し居心地がいいなとは思ったけどっ。
だってしょうがないと思わない?
赤ちゃんみたいに、優しく抱っこされてて、いい香りって、眠気も誘われるわよっ。
「ぎゃっ!!な、なにっ?!」
不意にお尻の辺りがすかすかし、不安定になったことに驚き、顔を上げれば。
涼しい顔して前を向いていた耕太は、あたしをお姫様抱っこしている。
こ、こいつの目的は何なんだっ。
目をぱちくりするあたしなんかお構いなしに、前を見据えたまま微笑んだ……?
……違う。 微笑み、じゃないっ。
にやり、といった方がしっくりくる。