全てを無に。
皐は気が付くと神社の境内の椅子に座っていた。

横を見ると満奈保もいた。

特に変わった様子はなかった。


「皐~なんかあたし、いつの間にか寝ちゃってたみたい」


満奈保は苦笑しながら皐に言う。

皐も同じく苦笑しながら言う。


「あたしも~。そろそろ帰ろっか?」

「そうだね!」


皐と満奈保は家が逆方向の為、その場で別れた。

皐は帰り道、不思議な事に気が付いた。

いつもこの道は沢山の人が通っている。

学生や社会人、近所のおばさん達も沢山いる。

それなのに、今は人一人いない。

皐は不思議に思ったが、気にせず家まで歩いた。


「ただいま~」


皐は気の抜けたような声で家に入り、自分の部屋に向かおうとした。

すると奥から皐の母がカンカンに怒りながら皐を迎えた。


「アンタ!今まで何処に行ってたのよ!!こんな…」

「お母さん、別にいつもと変わらないと思うけど?」

「アンタね~!日本が戦争を始めたっていうのに!!」



はっ?



皐の頭にはクエスチョンマークが3つ並んだ。

日本が戦争を始めた?

そんな訳ないでしょ?

だって、日本は条約を結んだはず…


「条約は?!」

「そんなの破棄よ!戦争を仕掛けられたのよ!!いざとなってもアメリカ軍は助けてくれないし…」





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