全てを無に。






「そうなんだ。アメリカは…日本を見捨てたんだ…」





その声は奥から出てきた父のものだった。

普段、凄く明るく話す父がしょんぼりした声を出した事に皐は驚いていた。


「まぁ…仕方ないんだがね……アメリカも戦争中だからな。」


お父さんは少し、寂しそうだった。

昔から、争いごとが大嫌いだったからなぁ。


「あ、そうそう。満奈保ちゃんとはもう会っちゃ駄目よ!」

「えっ?!なんで?!?!」

「満奈保ちゃんの地区とウチの地区は敵同士だからね。」


母は寂しそうに言った。

満奈保の母と皐の母はとても仲が良かったのだ。

だけど、逆らう事が出来ず従っている。


おかしい!


そう思った皐だったが、すぐに前向きに考えた。

このまま戦争を体験して…日本が変わってくれたら…。

皐は不謹慎ながらもワクワクしていた。




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