こころの展覧会
「よかったよ。あんた、いい子だな」
女性は笑った。
その穏和な表情は、不安や不満を消し去るようだった。
「そういえば、名前はなんて言うのさ?」
女性は藍の白色の帯を締めながら、聞いた。
「麻生藍(アソウ ラン)です」
「ランね…どんな字?」
「藍色の藍です」
「へぇ~、この着物の色と同じなんだ」
「そうですね」
女性に言われて、藍は自分の着ている着物を見下ろした。
青よりも深い、深い、青色。
「すごい偶然だなぁ。選んだ姫もすごいなー…って、あいつは適当に選んだんだろうけど」
「姫…?」
その単語に少し驚いた藍は、その“姫”という単語を繰り返してしまった。
「そう。あんたをここに連れてきた人だよ。椿姫(ツバキ)って名前で、姫って字がつくからさ。よしっ、できた」
女性は満足げな笑みを浮かべた。
洗面台の鏡には、女物の着物を着ている自分。
帯は蝶々のように凝った感じになっていた。