硝子玉
「いつかは、言わなくちゃいけないって知ってたけど・・・・。」
青空は僕の手をほどいた。
「私、記憶がなくなるの。」
「嘘だろ?!」
「本当だよ・・・・。これでも余命一年なんだから・・・。」
青空は原因不明の病気で、記憶がなくなっていく若い認知症みたいな病気。
その記憶が全部なくなったら青空が死ぬらしい。
「これでも精一杯生きてる。太陽に会えば少しは寿命が延びるかなって思った」
青空は、大空を包み込むように両手を伸ばした。
「まだ症状は出てないけどいつ出ても可笑しくないんだって。多分今日の事も太陽のことも忘れちゃうんだ・・・・・・っ!!!!!!」
「青空っ!大丈夫だから、俺が忘れさせないから!!!!!!!」
泣き崩れる青空を抱きしめ続けることしか今の僕にはできなかった。
その後はいつものように一緒に帰った。
ただ違うことはずっと手を離さなかったこと。
「これ返すよ。」
そう言って青空は硝子玉を渡してきた。
「あのときみたいだ。」
そう言って僕はその硝子玉をブレザーのポケットに入れた。