満たされしモノ
「もう!! 本当に冗談は止めてくれよ!!」


怒った振りをしながら僕は明後日の方向を向いた。


本当は恐怖しかないのだが、下手にでれば穴夫にヤられてしまう!!


「そうか、さすがに皆のいるところでは恥ずかしかったか。


ならば後ほど、ということにしておこう」


諦めてくれたのは良かったが一言余計だ。


穴夫の言い方では僕とアッーな関係みたいではないか!!


案の定というべきか、近くの席の数人が僕をチラチラ見つつヒソヒソと喋っている。


無実を知っているはずの不知火までが、僕に侮蔑のまなざしを向けている。……もう、好きにしてください。


言い訳や反論は更なる深みに嵌まると判断し、僕は外の景色を見続けることにした。


……


やや薄い青の空。雲の流れは穏やか。


良い天気だった。


まだ肌寒さの残る気温だが、今日なら外で日向ぼっこも可能かもしれない。


なんとなく適温に調整された室内より、自然の気温の方が好きな僕であった。


(でも、本当に晴れてよかった。室内戦より野外戦の方が自由に動けるからね)


パンタゴンや我骸惚骨流といった移動型店舗はその日の天気によって場所が変わる。


晴れ……つまり今日ならば『外』だね。


 
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