満たされしモノ
――


パペット先生の消失後、授業は滞りなく行われていく。


Aクラスの授業態度は真面目なので、教師にとっても負担は少ないはずだ。


別に勉強が好きなわけではない。


皆、昼食争奪戦のために力を温存しているのだ。


静かに、ひたすら黙って虚空を睨む目は餌を捕る直前の鷹の目だ。


現に四限目の今などは、昼休み直前ということもあって殺気立っている。


授業のことなんて頭に入っていないんだろうな……きっと。


「えー……であるからしてー」


うぅ……


そんな中で健気に教鞭を振るっている教師には、同情を禁じ得ない。


でも……すみません。


昼休みまで残り五分を切った。


もはや、誰もあなたの授業など聞いていません。


 


……


 


……そして、ついに時計の針が秒読み段階に突入する……


五……


四……


三……


二……


一……


キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン……――


終業の鐘が鳴ったと同時に机から跳ね起きるクラスメイト!!


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」


立った連中は教師を一瞥もせず、怒濤の勢いで飛び出していった。


まるで雪崩のように。


 
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