遠目の子鬼
又兵衛は、そんなもんで良いのかって言ったけど、僕からすれば大問題だ。


どうしても、みんなの足を引っ張りたくない。


全体練習の時も、僕が間違えたから曲を止められるなんて事が無い様に成りたい。


ユーフォニュームの腕は僕にとって一番の問題だ。


学校の勉強なんて、それに比べれば優先順位は各段に低い。


「うん、又兵衛から見ればそんな事かも知れないけど、僕から見れば、とっても大切な事なんだ」


又兵衛は、再び両目を閉じて、腕を組んだまま、こくりと小さく頷いた。


「ようし、分かった。俺が仲間と認めた奴だけの事は有る。普通の人間は、こう言う事を言うと、直ぐに金だの地位だの名誉だの、そんな事ばかり言いやがる。保孝は良い奴だな。よし、じゃぁ、明日から毎日、この教室に来い。俺が練習を付けてやる」


僕はちょっと怪訝な表情で又兵衛に訪ねた。


「練習?又兵衛が?」
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