遠目の子鬼
「…あ、あの、英二…前に言ったかも知れないけど、僕となっちゃんは…」


「分かってるって、誰にも言ったりしないさ。でも、俺には言ってくれるよな、小さい頃からの友達だ。俺に隠し事は無しにしてくれよ」


何を思ったのか英二が妙に爽やかな笑顔で僕にそう話した。


僕はどうして良いのか分からない。


正しい事を言ってみたとしても今の英二には信じてもらう事は出来なさそうな気配だ。


「いや、そうじゃなくて…さ」


そう言った僕の表情を見て英二は、再び勘違いな妄想を巡らせる。


「なに、俺は大丈夫だ、保孝が幸せになるんなら、それで満足さ。もし、将来結婚なんて事になったら、必ず呼んでくれよな」


僕は英二の言葉に、どきりとした。


『結婚』という単語にだ。
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