遠目の子鬼
「少し、自信が付いて来たんじゃないか?だから、俺の言う事に反論出来たんだ。自分の思ってる事と、俺が思ってる事が、少しずれている。今迄は、俺の言うなり。でも、自分の意見に自信が付いてきたから、俺の言う事が全てでは無い、そう思い始めてるんだ」


思いがけず褒められて、僕はちょっとくすぐったい気持になった。


「…ん、ま、まぁ、そう言う事も有るのかな?」


褒められ慣れない僕は、又兵衛にくるりと背を向け頬を人差し指でぽとぽりと掻いた。


どういう態度に出れば良いのか良く分からなかった。


「…さ、さぁ、練習しようよ…」


僕は又兵衛に背を向けながら、そう言った。


又兵衛の視線が背中に有る事が十分に感じられた。


とても気持ちの良い視線だった。
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