遠目の子鬼
「――う、うん、あのね」


僕は音楽室で出くわした光景の事を事細かに又兵衛に話した。


又兵衛は両腕を組んだままゆっくりと頷きながら僕の話を聞いて居た。


僕は真剣に話したつもりだった。


でも、又兵衛は自分の口を両手で抑え笑いをこらえながら僕に言った。


「――あのな、保孝、それは、彼女が、保孝を好きだって言ったんじゃぁ無くて、保孝みたいな人が好きだって言ったんだ。」


「僕、みたいな人?」


「そうだ、そこを勘違いしちゃ駄目だぞ。彼女の好みはあくまで、保孝みたいな人で有って、保孝本人じゃぁない」
< 43 / 274 >

この作品をシェア

pagetop