無色の日の残像
 空気と羽海が、ピースピース号と出会ったのは、幼い頃叔父さんの家に遊びに行った時だった。

 ガレージを見せてもらった時に、埃を被っている小型飛行機を発見したのだ。

 乗せて飛ばしてくれとせがむ二人に、叔父さんは困った顔で、いつもこう言っていた。

「うーん、世の中が今よりもっと、平和になったらね」

 平和になったら。

 幼い頃の二人には、それはいまいちピンとこない言葉だった。

 やがて学校へ行くようになり、二人は知ることになる。

 空気と羽海が生まれるずっと前から、この国は二つに分断されていて、絶えず争い続けていること。

 彼らが生まれ育った西側と。
 今いる東側とで。

 とは言え、空気と羽海の二人も──多くの西側の子供たちと同じように──自分たちのいる国が戦争をしている、などという事実には、いまいち実感が持てずにいた。

 住んでいる場所が攻撃を受けたことなど一度としてなかったし、時折、軍の戦闘機らしき影が頭上を飛んでゆくことはあっても、それは自分たちの日常からは遠くかけ離れた世界のことだった。
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