無色の日の残像
 東側と西側と。

 何が違うのだろう。
 もともと一つの国で、言葉も、文化も、そんなに違わないはずなのに。

「なあなあ、知ってる? 東ってさ、すっげえ進んだ技術持ってるんだぜ」
「みんな、メチャメチャ高い建物の中で暮らしててさ、街には動く道とかあるんだって」
「こっちじゃ治らない病気にも、東に行けば特効薬があるって言うぜ」

 そんな話を聞くうちに、空気と羽海の中では、見たことのない東の世界に対する興味が膨らんでいった。

 しかし秘密主義の東側の様子はテレビでも報道されていないし、公共の電車も飛行機もバスも船も、国交のない東には行くことができない。

 東には、どんな人たちが暮らしているのだろう。
どんな風景が広がっているのだろう。

 一度で良いから見てみたい、そんな想いがどんどん大きくなり──そして去年。
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