無色の日の残像
 末期癌で叔父さんが亡くなった時に、二人にはチャンスが訪れた。

『空気と羽海へ
 ピースピース号を託す』

 ガレージの中にはそんな手紙と一緒に、ぴかぴかに磨き上げられて修理を施された、銀色のセスナ機が残されていた。

 これに乗って、東側を見に行こう。

 どちらからともなくそう言い出して、一年かけて計画を練った。

 もちろんこんな話、親にも学校にも知られるわけにはゆかない。

 二人が考えついたのが、四泊五日の修学旅行を利用するという手だった。
 親には修学旅行に行くと言い、学校には用事があると言って旅行を休み──二人は計画を実行に移した。

 来年になれば受験が始まる。
 その前に、高校最後の思い出のつもりで、二人は文字通りに生まれ育った世界を飛び出した。
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