無色の日の残像
「え、えーと? よろしく?」
「ここは本土から離れた島なんだ」と、無色は淡々とした口調で言った。

「あるのは病院と小さな町だけ」

「話が見えないんだけど?」
 空気が眉間に皺を作って、無色の表情を窺った。

「セスナの故障が直るまで、きみたちにはこの島から一歩も外に出ずに過ごしてもらう」

 無色は溜息混じりに告げた。

「島にある施設や建物は、ある程度自由に見てもらって構わないけど、ただし──その間──休暇でこの島に滞在する僕が、きみらの動向を見張ることになった」

 ぽかんとしている二人から、テーブルに置かれたパルフェに視線を移して「美味しそうだな、それ」と無色は呟いた。

「マスター、僕にも同じのを下さい」
「ハイハーイ。甘いのは平気なのかな、無色くんは?」

 おどけた調子でマスターが言って、無色はこくん、と頷いた。

「はい。甘いものは、とても得意です」
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