無色の日の残像
「僕と透明は、非合法なクローンなんだ」と、無色は言った。

「法律では、戦闘に巻き込まれて五歳以下の子供が死亡した場合にのみ、その*体細胞からの核移植によるクローン作成を認めてる」

 子供を失った親の悲しみを癒すための法律なのだと、彼──ではなく彼女は説明した。

「でも僕らは、二十歳を超えて死亡した成人の、体細胞から作られたクローンなんだ」

「それは──法律違反なのか?」
「そう、大人から作るのは駄目なの」
「どうしてだ?」

「一つは、自我と個性の確立に基づく倫理面の問題で」

 空気と羽海にも、何となくわかるような気がした。
 例え死んでしまった者と肉体的には全く同じ人間を作ったとしても、記憶や人格までは移せない。

 姿だけが同じ別人なのだ。

 このジレンマは、確かに周囲の者やクローン本人を苦しめることになりそうだった。

 しかし──これは言い換えるならば、五歳以下の子供には人格を認めていないともとれて、二人には酷い法律に思えた。

「そしてもう一つは、染色体の損傷とテロメアの問題があるから」

 全くわからなかった。
 無色の口から飛び出したのは、空気と羽海には全くもって、ちんぷんかんぷんの内容だった。
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