無色の日の残像
ところが、代理母が二人を身籠もっている間に、世間にこの事実がバレて、メディアはこぞってこの老夫婦を吊し上げた。
警察機関も目を瞑るわけにはゆかなくなり、結果、無色たちの出産前に、老夫婦は自殺してしまったのだそうだ。
各種メディアに大きく報じられた事件だったため、生まれてきた無色と透明には配慮で、本来両親となる予定だった老夫婦の苗字ではなく、公にされていない代理母たちの苗字がつけられたのだそうだ。
「生まれつき身寄りがない上に、法にまで抵触してる僕らは、軍の施設に引き取られて育てられたんだ」
「軍に・・・・・・?」
空気と羽海は、無色の華奢な体を包んでいる軍服を見た。
「ま、実験体みたいなものだよ」と、無色は無表情に肩をすくめた。
「幸い僕は──色んな実験のせいか、遺伝子の異常のせいか、普通の人よりも巧く戦闘機を操れるってことがわかってさ、訓練を受けてパイロットにしてもらったけど──」
ここで初めて、無色は悲しそうな顔をした。
ここまで表情らしい表情を何一つ見せなかった彼女が、初めて見せる顔だった。
「透明はずっとこんなとこにいて、医療実験を受け続けてる」
「わたしは平気よ」
透明が微笑んだ。
「こうやって無色が会いに来てくれるもの。それに、無色は戦場で危ない目に遭ってるんだもん。わたしだって、育ててくれた軍のために、できることをしなくちゃね」
警察機関も目を瞑るわけにはゆかなくなり、結果、無色たちの出産前に、老夫婦は自殺してしまったのだそうだ。
各種メディアに大きく報じられた事件だったため、生まれてきた無色と透明には配慮で、本来両親となる予定だった老夫婦の苗字ではなく、公にされていない代理母たちの苗字がつけられたのだそうだ。
「生まれつき身寄りがない上に、法にまで抵触してる僕らは、軍の施設に引き取られて育てられたんだ」
「軍に・・・・・・?」
空気と羽海は、無色の華奢な体を包んでいる軍服を見た。
「ま、実験体みたいなものだよ」と、無色は無表情に肩をすくめた。
「幸い僕は──色んな実験のせいか、遺伝子の異常のせいか、普通の人よりも巧く戦闘機を操れるってことがわかってさ、訓練を受けてパイロットにしてもらったけど──」
ここで初めて、無色は悲しそうな顔をした。
ここまで表情らしい表情を何一つ見せなかった彼女が、初めて見せる顔だった。
「透明はずっとこんなとこにいて、医療実験を受け続けてる」
「わたしは平気よ」
透明が微笑んだ。
「こうやって無色が会いに来てくれるもの。それに、無色は戦場で危ない目に遭ってるんだもん。わたしだって、育ててくれた軍のために、できることをしなくちゃね」