無色の日の残像
「酷い・・・・・・」

 ようやく言葉を発することができるようになった羽海が、声を震わせた。

「酷い? 何が酷いの?」
 無色がやはり何の感情もこもらない声で聞き返した。

 羽海は答えることができずに唇を噛んだ。

 何が酷いのだろう。

 彼らを作った人たちだろうか。
 それとも老夫婦を死に追いやった世間?
 彼らを実験体として育てた軍?

「酷くないよ、別に」

 無色は何とも思っていない様子で断言した。

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