無色の日の残像
「なるほど!」
 雨鳥はニッコリ微笑んだ。

「自分が何をしているのか全くわかっていない、という意味だね、無色くん」

 キョトン、と無色は首を傾げて雨鳥を見上げた。

「俺の質問の答えがわかったら、俺がここで店を開く前に何をしていたのか教えてあげるよ」

 茫然としている無色にマスターはそう言って、テーブルの上を示した。

「どうぞ、冷めるよ?」

 言われて、無色は目の前に置かれたミルクに視線を落とした。

「大丈夫です、熱いのも苦手ですから」

 冷めたくらいがちょうど良いんです。もごもごと呟きながら、無色はミルクから立ち上る湯気をじっと睨んだ。
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