無色の日の残像
「あの」
 去り際に、無色はおじさんに声をかけた。

「なんだガキンチョ」
「ガキンチョじゃない。おじさん、ちょっと聞きたいんだけど」

 無色はためらいながら口にした。

「僕は、輝神を飛ばしてるんだよね」
「はあ?」

 目を丸くするおじさんに、無色は雨鳥に言われたことを説明した。

「僕は、戦闘機を飛ばしているって答えたんだ。でも、何をしているのかわかっていないという意味だ、と言われてしまって──」

 無色は眉根をぐっと寄せて皺を作った。

「どうしてだろう」

 おじさんは無精髭の生えた顎を掻いた。

「はあーあ、ガキンチョの質問だな」
「え?」
「つまり、だ。その人はよォ」

 おじさんはぺしっと首の後ろを一回叩いて言った。

「ガキンチョは輝神に乗って、何をしてるのか、って聞いたのさ」

「【カグヤ】に、乗って──?」

 じゃあ、修理が終わったら連絡入れるぜ、そう言っておじさんは工場の中に消えていった。
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